第三章 両親へ 1
「はい、『アフターメッセージ』です」
電話に出た男の声が高かったので、常磐瑞穂は一瞬戸惑った。
「あの……チラシを見て電話しました」
「では、詳しいことを説明しますので、ご都合のよい日時にこちらまでお越しいただきたいのですが」
「土日もやっていますか?」
「今度の土曜日の午後でしたら空いております」
――何か予定があったかな――
瑞穂はすぐには思い出せなかった。
――予定が入っていれば予約を変更してもらえばいい――
「じゃあ、午後三時でもいいですか?」
「はい、だいじょうぶです。場所は分かりますか?」
「たぶん……」
――分からなければ、そのときに電話して確認すればいい――
「お名前は?」
「常磐瑞穂です」
「トキワさんですね、どのような漢字を書きますか?」
「常磐線の常磐で、トキワと読みます」
電話の向こうでマジックで書く音がした。
「では、土曜日の午後三時にお待ちしています」
瑞穂は迷うことなくその事務所のあるビルに着くことができた。
エレベーターで三階まで上がると、三〇一号室は目の前であった。
外から部屋の中が見えないことは、瑞穂を不安にさせた。
チャイムを押す決心がつかないでいると、不意にドアが開いて、中から背が高く細身の背広を着た男が出てきた。