企図! プライベート・グラビア

四つ葉館で真由美に会うと十中八九、原田さんが大騒ぎをするので、バスで隣町までわざわざ足を運び、停留所近くの喫茶店でアイスコーヒーを注文したあとは、読みかけの小説をタブレットで読みながら約束の刻まで時間を潰した。

入口に、真由美……藤崎真由美【ふじさきまゆみ】の姿。

「ヒカリ、お待たせ! 眼鏡スタイルだね。また本読んでたの?」

「うん、正式には電子書籍だけどね」

「またまたぁ、正式なんていいじゃない。それで、今日の相談って?」

「これを、見て欲しいのよ」

私は眼鏡とタブレットを丁寧に仕舞い、クリアファイルを取り出した。

「これは……ヒカリのグラビアだよね? 何の雑誌のポスター?」

「これは完全なる撮り下ろしよ。しかも、仕事じゃなくプライベートで」

「プライベートのグラビア? 目的は何なの?」

「一人でも多くの人に星巡波を知ってもらうため。でも、大きな理由はもう一つあって」

「その理由が今日の相談なんだね。要旨がだんだん把握できてきた」

「真由美、単刀直入に言うわ。私と会社を作らない?」

「えっ? プライベート・グラビアで?」

「思春期層という読者から支持層を拡げるチャンスは今よ!」

「たしかにGELATOのアンケートは圧倒的に10代が多かったよね。それをプライベート・グラビアにすることで、どうして支持層が増えるの?」

「プライベートだから層が増える、というのは少し違うわ。正確にはどうやってこのポスターを読者の元に届けるか、なの」

「ねぇヒカリ、勿体振らないで真相を教えてよ!」

「わかった、順を追って説明するね。まず、ポスターはフリーペーパーに折り込むの」

「フリー……ペーパー、って、それじゃ利益にならないじゃん!」

「まぁそういうことになるわね。でも」

「でも?」

「被写体が私たち以外だったらどうなる?」

「えと……それでも無料だから儲けは無し?」

「そうね、普通ならそう。ここからが本題よ。

私たち以外の被写体……普通の学校に通う女子高生に募集をかけるとする。募集要項には、読者の支持が高かった人は、雑誌の掲載を約束と記述。写真は、自慢の1枚を同封してもいいし、私たちが撮影を買って出てもいい。

専属のカメラマンを雇えるに越したことはないけど、撮られる側だった私たちなら、ある程度のシャッターチャンスはわかるはず」

「さっき、雑誌に掲載って言ってたけど、当てはあるの? GELATOってわけにはいかないよね?」

「そうね、異論は無いわ。私の台詞を聞き逃さなかったら、手段はもう一つあるはずよ」

「あ、会社! 会社作るって言ってた! そんなこと可能なの?」

「資金、人材、場所。揃えばきっと形になるわ。真由美、この企画、賛成? それとも……?」

「あたし、挑戦って大好き! いーじゃん、やろうよ。やってみよう!」

こうして私は、GELATOの同志藤崎真由美とプライベートのグラビアを募集するという前人未到の企画に着手した。

印刷会社の条件……一人の女の子が撮影されたポスターは30枚以上から請け負うとのことだったので、私と真由美は30枚すべてにサインを書いて住民の反応を伺うことにした。

下限は30、上限はエリアによって違うが、230の地域もあれば700の地域もある。

紀行くんの様な読者なら無料紙の付録にGELATOのツートップのポスターが直筆サイン付きで折り込んである。夢のような逸話だろう。

そういう読者をこれからどんどん増やしていく。私の内なる野望は、燃え盛る夏の太陽の様だった。