「なんだこいつは! 邪魔な奴まで連れてきやがって」
「須戸麗花の執事らしいんですがね、まさか手錠で繋がれてるなんて……めんどくせえんで一緒に拉致してきましたんで」
「さっさとそんな腕切っちまえよ」
「こんなごっつい腕、切り落とすのも厄介ですぜ」
「フジオカの腕を切るくらいなら私の腕を切れ! 但しそうなれば二度と私は口を開かんぞ」
須戸麗花は驚きの言葉を発した。
「こりゃ気の強いお嬢さんだねえ。まあゆっくり楽しむとするか」
郭は不敵な笑みを浮かべる。
すでに拉致されていた二人の博士夫妻もこの建物の地下牢に閉じ込められていた。
博士夫妻たちは、どのみちその装置の秘密を伝えても、その後に殺されるだけだろうと内容を一切教えないという結論に達していたのだ。
須戸麗花とフジオカは、博士たちのいる地下牢に連れてこられた。
「さあ、どうですかお嬢さん。この二人の頑固な博士たちは、絶対に口を割らないと決めてしまったようですが」
「う~ん、そうだなあ……」
須戸麗花は少し考えて。
「まずはそっちの博士夫婦の解放だな。そうしたら装置の秘密に関しては、考えないでもない」
「自分の立場を分かってんのか、このアマ」
郭の部下が声を荒げた。
「まあ待てって。お嬢さんこっちも、世界の重要な頭脳遺産を無益な殺生で失うようなことをしたいわけじゃない。ただ、私は嘘が嫌いでね。もしお嬢さんが必ず装置の秘密を教えてくれるって言うのなら、二人の博士たちは解放しないでもないがね」
「須戸博士! やめろ! 我々の研究をこんな奴らに売るのは」
カーネル博士とサンダース博士は口を揃えて言った。
「私はもう周りで人が苦しんだり命を落としたりするのを見るのはまっぴらなんだよ。じゃ、段取りとしては、まずカーネル博士たちの解放。その後装置の概要をあんたのパソコンに入力してやるよ、ただそうだなあ、一時間くらいはかかるかなあ」
「三十分でやれ、ハイ交渉成立」
郭とその一味たちは、博士たちの足の腱を切り裂いて走れないようにした上で、地上に解放した。
須戸麗花は装置の入力に取り掛かる。
そのころ、地上ではフジオカの仲間のアーニーとバートの二人が、博士たちを保護していた。
アーニーは続けて、付近にスモークを焚き始め、付近に毒ガスが漏れたと非常線を張り周囲に人が近づかないように細工をした。
その間にバートは、その廃ビルにある仕掛けを施し始めた。
「お嬢さん、そろそろ約束の三十分だぜ」
「う~ん……わかったわかった。残り三十秒になったら秒読みしてくれないかな」
「将棋かよ!」
「こまったお嬢さんだねえ。あと二分」
「あと一分」
「二十五秒・六・七・八・九……