そう言うと、彼女は私の手を握った。
「いえいえ。私は美人じゃないですよ。母に子どもの頃から『器量が悪いんだから笑顔で愛想良くしなさい』ってよく言われましたよ(笑)」
「目が大きくて美人さんですよ〜! タクシードライバーなんて、かっこいいですね」
「(笑)よかったら、タクシードライバーになりますか? 紹介しますよ」
「わあ〜! 美人さんと働きたい! あ……でも、私免許なかったんだ」
「(笑)(笑)(笑)(笑)」
誰もいない店内。二人の笑い声が響いた。
「また来ますね。寒いから風邪引かないようにお気をつけくださいね」
「はぁい! 運転手さんも、ガンバ!」
満面の笑顔に心を和まされた。素敵なヒトだなって思った。私も負けていられない。頑張らなくちゃ!
笑顔は人を幸せにする。外は風が冷たく、容赦なく私に吹き付けた。だが、心は温かい。パンを頬張り、笑顔が素敵な彼女のいるコンビニを後にした。
「一緒に頑張ろうね」
私はそう呟いた。不思議と穏やかな気持ちでいられる夜だった。
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