臭いものに蓋をするという姿勢では、取り返しのつかない病態になる
何らかの症状があるにもかかわらず、それを放置して、取り返しがつかない状態で病院を受診される方がいます。
普段と異なる症状があるものの、それを軽視している、あるいは、がんなどの重大な病気が見つかったら怖いからというような理由がほとんどです。
まさに、「臭いものに蓋をする」という姿勢です。
例えば、私が専門とする消化器疾患では、「数年前から時折血便があったけれど、痔だと思って様子を見ていました」というように、勝手に軽い病気だと解釈する人がいます。
たしかに痔が原因で血便が出る人もいますが、中には大腸がんからの出血で血便が出る人もいます。
また、「気にはなっていたけど、仕事が忙しくて受診できませんでした」というような人もいます。
自分の軽い病気のイメージが正解なら問題ありませんが、大腸がんなどの病気なら、症状を無視している間に病状が進行してしまいます。
「半年以上前から喉が渇いて、尿の回数が増加し、体がだるくなっていました。大した病気ではないと思い様子を見ていましたが、あまりにも長く続くので内科を受診しました」
というようなケースもあります。
このような方を何人か診たことがありますが、いずれも重症の糖尿病でした。
糖尿病は通常、症状がありませんが、あまりにも高血糖が持続すると、このような症状を呈することがあります。中には網膜症や神経障害を合併していることがあり、取り返しのつかない状態で受診された人もいます。
私自身も小学生の頃、運動をしていたときに足を挫いてしまい、「捻挫」と思い込んでいました。
しかし、何週間たっても足首の痛みや腫れが取れず、病院を受診したところ、「剥離骨折」していたことが判明し、整形外科の先生に「なぜこんなに長く放置していたんだ!」と親子ともども叱られたことがあります。