医療に絶対はない、だから手術など体に負担をかける治療は必要最小限にすべき

人間の体はうまくできていると、日々診療をしていてつくづく思います。不必要な臓器はほとんどないと断言できます。

しかし、がんができてしまったり、骨が折れたりして、はからずも手術を受けなければいけない場面に遭遇そうぐうすることも少なくありません。

読者のみなさん自身やご家族や周りの人で、手術を受けた方がきっといるはずです。

では医師から手術を提案された場合は、必ずその指示に従うべきなのでしょうか?

必ずしもそうではないと思います。

例えば、がんが発見された場合、医師も患者さんも「手術が必要」と短絡的に考えてしまう傾向にあります。果たして、本当に必要なのでしょうか? 超高齢で手術をしてもしなくても寿命が変わらなかったり、放射線治療でも生存期間に差がなかったりするがんもあります。

ただ現代社会においては、「がん=手術で切除するもの」という固定観念を持つ方が非常に多いです。そして大きな手術であればあるほど、大きなリスクが存在します。手術が提案されたときは、そのメリット・デメリットを把握する必要がありますので、医師から納得のいく説明がない場合は確認した方がいいと思います。

また、手術を行うにしても、あとで詳しく述べますが、「開腹手術」なのか、「腹腔鏡ふくくうきょう手術」なのか、「内視鏡手術」なのかで、体への負担がずいぶん違います。

以前、一緒に働いていた外科医は「胃がんができたら、胃なんて全部取った方がいいよ。そしたら胃がないから、胃がんなんて今後できないよ」と言っていました。冗談かもしれませんが、冗談でもこのようなことを安易に言う医師には注意が必要だと思います。

非常にリスクが高いといわれる食道がんの外科手術の手術死亡率(手術後1ヵ月以内に死亡する割合)は3〜4%といわれており、病院によっては手術死亡率が10%以上のところもあるといわれています。非常に高いと思いませんか?

歌舞伎役者の中村勘三郎さんは外科手術を受け、術後4ヵ月で肺炎のためお亡くなりになりました。手術前日にはゴルフに行くくらいお元気であったということですので、いかに外科手術が体に大きなダメージを与えるか理解できると思います。

ちなみに、食道がんの内視鏡手術の手術死亡率はほぼ0%ですので、内視鏡手術の安全性が理解できるかと思います。医師から手術が提案された場合は、より低侵襲(体への負担が少ない)の手術が可能かどうか問いただすことが時に必要だと思います。

そのためには、患者さん自身もある程度医学的知識を身に付けておかなければなりません。