医療費増大の理由
高齢者医療とかぶりますが、医療費増大の要因として、がん患者の増加も挙げられると思います。
2019年の新規がん患者の総数は102万人と言われます。すごい数字だと思いませんか?
私が医師になった20年前は、どんながんでも80歳以上には外科手術や抗がん剤治療などの積極的治療はせず、最低限の治療だけ行うということが一般的でした。しかし、高齢化社会の到来により、80歳以上の高齢者のがん患者も増え、何歳であっても、ある程度健康であるなら、がん治療を行うという風潮になっています。
私自身も消化器内科医として、多数の消化器がんの内視鏡手術などの治療を行っていますが、治療年齢の平均は70歳以上で、年金受給者の割合が多い傾向にあります。近年では、抗がん剤の種類も増え、生物学的製剤という非常に高価な薬も出て、医療費高騰の要因となっています。がん治療も、広い意味では延命治療です。医療費削減の観点からは、このがん治療についても見直していかなければいけないと思います。
医療費増大のもう一つの原因は、生活習慣病(メタボリックシンドローム、いわゆるメタボ)の患者数の増加です。生活習慣病の代表的な病気は、糖尿病・高血圧・脂質異常症、肥満症などです。これらの病気は悪い生活習慣に基づくものなので、その生活習慣の改善に主眼を置かなければなりません。
しかし現在の医療では、生活習慣の改善を促すことは診療報酬につながらない場合が多いためほとんどなされておらず、投薬による治療が漫然と行われる傾向にあります。国民皆保険の日本では、欧米に比べて医療費が安価であることもあり、患者さんも薬を処方されると、何の疑問もなく、ただ医師の言うがままに、特に悪い生活習慣を変えることなく、生涯、漫然と薬を飲んでいる人が大半です。そんなことでいいのでしょうか?
私は消化器内科医として働いて10年を経過した頃に、「糖質制限」という肥満症・糖尿病の最新の食事療法に出会いました。肥満や糖尿病は糖質の摂りすぎから発症するので、日々の食事の糖質の摂取量を減らすことで、減量や血糖値改善を目指す食事療法です。