冷たく言ってしまえば、「類は友を呼ぶ」ということわざもありますので、「やぶ医者」を見分けることができず、その診療を受けている患者さんは「やぶ患者」ということになります。
それ以外にも、医学知識を得ようとはせず、全く病気の予防を行っていないにもかかわらず、長生きしたいと思っている人も、いざ何か症状が出て病院を受診したときは「やぶ患者」ということになるでしょう。
「自分は医療者ではないし、医療は関係ない。何かあればプロである医師にまかせればいい」という人も大勢います。決してそんなことはありません。
医学は人間一人ひとりの体の学問であり、他人事ではないはずです。
それに最近ではテレビや雑誌などで健康に関する話題がよく取り上げられており、読者のみなさんは情報を取捨選択して、予防など自分の体にいいと思うことはどんどん取り入れていくべきです。
ただ酷ですが、間違った知識を一生懸命実践している人も残念ながら「やぶ患者」です。
また、さまざまな診療科を受診し、自分が何の病気で、どんな薬を飲んでいるのかもわからず、ただ医師の言いなりの患者さんも「やぶ患者」と言わざるを得ません。
もちろん「腕のいい医師」にかかっていても、その指導に従わず、自分勝手に生きている患者さんも「やぶ患者」です。
健康寿命とは2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念で、「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。
つまり介護を受けていたり、寝たきりの状態だったりではなく、生活に支障のない完全に健康な期間のことです。逆に言えば、平均寿命と健康寿命の差にあたる期間は日常生活に制限のある「不健康」な期間というわけです。
「死んだらかわいそう」というような情緒論から、寝たきりで高度認知症の超高齢者などに胃ろう造設や過剰な点滴をしたり、無理やり介助して食事させるなどの延命治療が蔓延している現状があります。
いわゆる「不健康」な期間の無理な延長です。
「なぜここまで無理して、この人は生きなければいけないのか?」「この人は、こうまでして生きたいと思っているのか?」「この人の人間としての尊厳は保たれているのか?」など、日々の日常診療の中で疑問に思うことが多々あります。
このように家族や医療者の意向で無理な延命治療を受けている患者さんも、酷ですが「やぶ患者」ということになるでしょう。