進路編~義務教育から羽ばたく子どもにできること~
どうしても知っておいてほしいことは、大人や教師が思っている以上に、子どもは自分の進路に対して不安で、その心は大きく揺れているということです。
一見、何も考えていないように見えても、進路決定に向けて動き出していないように見えても、一生懸命悩み、考えている子がほとんどだということです(私が出会ってきた子はそうでした)。
そこに寄り添えるかが、大切だと思います(この寄り添うという行為は、今後オンラインだけでどうにかなるのでしょうか……)。
さて、それでは進路学習を進めるうえで、大切なことはなんでしょう。私は2点あると思います。
1つめは「正確な情報を与えること」です。
自分の進路について、ほとんどの子どもが大きな不安を抱いています。そして自分がどうやって動き出せばよいのかに悩みます。だから私が進路を担当する時は、子どもが何に不安をおぼえているのか、どんな質問があるのかを募集するようにしています。
不安の正体は「情報不足」であることがほとんどであるからです。
例えば、海の真ん中にポツンと浮かぶ船の上にあなたがいたとして、安全な島まで行くために、やみくもに船をこぎだしたり、海に飛び込む人を「勇気のある人」というでしょうか。
もしかしたら方角が間違っていたり、サメが現れたりするかもしれません。それは勇気ではなく無謀です。ほとんどの人がしばらく動き出せないのは、圧倒的に情報が足りていないからでしょう。情報が足りていないから不安なのです。
進路学習も同じだと思います。子どもが自分の進路を考え行動できるように、私たちにできるのは、正確な情報を与えることです。
「ここの学校だったら君の学力でも入れるかもしれないよ」と無理やり高校にはめこんでも、進学後に楽しく通えなかったり、途中でやめてしまったりすることになってはかわいそうです。
あくまで情報をもとに自分で決めさせるのです。以前テレビ番組で、北欧のある国では、学校の教師による進路指導はあまりないと放送していました。
理由は、教師の側からすれば、各家庭のプライベートなことに口を出すべきではないということであり、保護者の側からすれば、大切なわが子の進路は責任をもって家族で決めるということだそうです。
私も3人の父親ですが、やっぱりわが子の進路は、家族で話し合い、最後は本人の意思を尊重して決めていきたいと思います。他人に任せるなんてできません。
ただやはり決めるための情報は欲しいなと思います。
2つめは、「深く自分のことを知ること」です。
何度も言うように、進路学習のゴールは「高校の選択」ではありません。その先にある仕事を通してどのような生き方をしたいかを考えさせることだと思います。