「カウンセリングマインド万能論」を広めた張本人
高校3年生の秋、大学模試の公開テストを受けた時のこと。国語で出題されたおそらく1000字に満たないだろう文章に惹きつけられた。問題を解きながらもその内容が胸に突き刺さっている感じがあった。出典を見ると、河合隼雄著『無意識の構造』(中公新書 1977年)とあった。
模試の帰りに本屋に立ち寄り、すぐに購入した。その日からむさぼるように読み込み、あっという間に読み終えた。内容は簡単ではなかったが、こんな世界があるのかと、ますます心理学に引き込まれた。
すでに進路を決め、進学先も決めていた段階だったため、その方向に進むことはなかったが、その後も河合隼雄先生の、こと教育に関わる著書は必ず目を通していた。
教員になって8年目、『臨床教育学入門』(岩波書店 1995年)が発刊され、その中に、次のように書かれていた。
「これから子どもの数が少なくなってくる。この機会に各教育委員会は、先生の研修をもっと増加させるように努力すべきである。京都市の教育委員会からは、毎年二名の現職教師が、私が勤めていた京都大学教育学部の臨床心理学教室に一年間研修に来られた。」(168ページ)
この著書自体がそれこそバイブルになっていたが、この機にと、研修を受けられる可能性を探り、京都大学に電話を入れてみた。すると、河合隼雄先生は退官しておられたが、その後任として大学院教育学研究科臨床教育学専攻(現職教員等を対象としている)第二種を受け持っておられる皇紀夫先生を紹介された。皇先生に電話をすると、「まぁ、一度来てみなさい」とご快諾いただいた。