その言葉をきいて、橘子は少しどきっとした。紀理子さんが自分はとてもかなわないと感じてしまったら大變たいへんだ。唯でさえ戀人としての自信が揺らぎがちにおもえるのに。橘子は慌ててフォローした。

「あ、でも、ずっと年上だし」

「えっ、でも二十歳くらいでしょ、この頃?」

「あ、うん、大学生と言われてたから」

あの頃の和華子さんと今の自分で比較対象としてまた考えてしまわれたらと、橘子は気を揉んだ。フォローしたつもりが、かえってぐあいがわるくなったかもしれない。和華子さんの写真を持ってきたことは逆効果だったろうか。和華子さんのことはずっと昔のことではあるけれども、清躬くんには今も和華子さんの存在が大きくて、紀理子さんがその影を感じているとしたら……

「この、和華子さんという方のこと、もう少し教えてくださいますか?」

紀理子さんの催促に、橘子はどういう話をしたものかと少し考えた。下手な物言いをしたら、かの女は一層自信をなくして、清躬くんとの関係での苦しみを深くしてしまうかもしれない。でも、あまり考えても不自然になる。橘子は素直に話を始めた。