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第2章 人事制度に潜む罠
古き良き年功序列は根強い
人事評価の仕組みを、自分のためだけに、ひとりで作り上げることはできません。
評価制度は、入った会社にすでに存在しているもので、その枠の中で工夫を凝らしながら、上手に泳ぐ術を、身に着けていくことになります。
世の中には、いろいろな種類の人事制度が存在します。また、時代の変遷と共に変化し、進化しています。私が社会人デビューした頃は、「年功序列型」の人事制度が当たり前の世界でした。
仕組みは単純明快で、在籍年数に応じて給料が増え、役職も上がるようになるので、必然的に、「偉いさん」と呼ばれる役職者は、年配の方で占められていて、我々も、滅私奉公すればあの地位にまでたどり着けるという、「暗黙の了解」がありました。
古き良き時代といえばそれまでですが、不思議な事態に遭遇することもありました。入社4年目だったと思いますが、同期数名と、給与明細を見せ合ったことがあります。
当時の会社では、入社して3年間は、基本給に差がつかない仕組みでしたので、どれくらいの差がつくのか、興味本位で「えい、やー!」でやってみたのです。すると、確かに差のついている同期もいました。
しかし、差額は実に微妙で、あっても数百円程度でした。「なーんだ、そんなもんなんだ」当時の率直な感想でした。同時に、もっと驚くべき事実を知ります。同期のひとりは、すでに結婚していました。
その妻帯者の支給額が、他の同期と比べて飛び抜けて多いのです。中身をよく見ると、「家族手当」という名目の手当てが支給されています。
しかも、その金額が、基本給の差に比べると、桁違いに多かったので驚きました。
「結婚すると、給料が増える」という現実を知った瞬間でした。
この出来事から、会社から支給される給料が、必ずしも仕事や実績と連動しないことを学びました。若くして結婚すると、年功賃金では暮らせないとの配慮からなのでしょうか。
かくいう私も、結婚してからは、その恩恵にあずかることになります。余談ですが、収入が「多い少ない」に関しては、その頃は、まだどちらかというと無頓着でした。
それよりも、とにかく早く仕事を覚えて、与えられた目標を達成することで、一人前として認められることのほうが、重要な関心事でした。きっと、昇格して「偉く」なれば、給料も自動的に増えていくと信じていたのでしょう。
更にもうひとつ、会社の「表彰制度」が影響していたように思います。この会社には、営業成績を達成した担当者を、定期的に表彰する制度がありました。
しかも、表彰状は個人名で、営業責任者より直接手渡されるので、担当者によっては、強烈なモチベーションに結びつくことになります。
ほめられたり、表彰されたりすると、金銭を受け取った場合と同じ脳の部位が反応することを、かなり経ってから知りました。たかが「紙っぺら1枚」で、あたかも「大金」を手にした気分になるわけです。