今度は丸太状の細長い木を手に取ったけど、輪郭が完全な丸じゃないのが気にくわなかった。ヤスリで少しずつ削って自分で思う完璧な円にした方が、球体から円を切り出すよりは簡単かもしれない。けど、どっちの作り方がいいんだろうと考えていたら、木材コーナーに二時間もいた。丸い材料一つ選ぶだけでこんなに悩んだのは初めてだった。
城間さんの顔を思い出そうとした。でも、二度目に会った彼女のことも思い出せない。九九は結局のところ全部覚えていなくても計算をちゃんとすれば答えが出せる。それと一緒で、彼女に似合う正解のモノを作りたい。でも、肝心な彼女の顔がどうしても思い出せない。思い出せるのはウィスパーの声と会話の内容だけだ。
また今度違うホームセンターに行って探してみようと諦めて、僕は自転車で家路についた。
暖かい風を自転車と同じ速度で浴びて、じんわりと背中に汗をかいた。