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健太のプレッシャーと麗子の初めての挫折
横浜市内の小さな商店街。日の出の時間に自転車に乗って新聞配達をしている大学生がいる。健太の一番上のお兄さんの隆だ。
一軒一軒、丁寧に新聞を郵便受けに入れていく。外に出てきた八百屋の店主の、市川が声をかけ
「隆君、おはよう」
「おはようございます」
「毎日頑張るね!」
「はい」
「健太君はどう?」
「健太、もの凄く頑張ってます」
と嬉しそうに話す隆。
「お母さんもパート、お兄ちゃんたちもバイトをして健太君支えてるんだからたいしたもんだよ」
「ありがとうございます。失礼します」
と言って自転車をこぎ出す隆。築年数がかなり経っている2階建ての一軒家。健太の母、詩織が出かける用意をバタバタとしている。
「健太、出る準備できた? もう行かないと間に合わないわよ」
「ちょっと待って。あと教科書を入れたら行ける」
階段をあわてて下りてくる健太。
「宿題は持ったの?」
「あっ、入れ忘れた」
階段をもう一度あわてて上り、すぐ下りてくる。そこに配達が終わった隆が戻ってくる。
「あれ、まだ健太いるのかよ」
「健太、ちゃんと挨拶して行きなさい。お兄ちゃんが働いてくれるからあんたスケートができるんだから」
「わかってるよ。大兄ちゃん、行ってきます!」
と元気に飛び出す健太
「行ってこい」
詩織と健太は、駐車してある水色の可愛いらしい丸みのある軽自動車に乗り込む。車が横浜アイスアリーナに到着して、健太が降りる。
「いつもの時間に迎えにくるからね」
「うん、わかってる。じゃあね」