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ライバルと初めて出会う野辺山合宿

野辺山合宿に参加する選手とその親やコーチが続々とやってくる。翼も剛と一緒に帝産ロッヂへ入っていく。

講堂に全員が集められ合宿の注意事項などの説明をうける。選手の中には、純も健太もいる。麗子は連盟からすでに特別にシードをもらっているため、今回の合宿はパスしている。説明が終わり解散になると健太が翼のところにやってくる。

「よろしくな」と翼に声をかけ手を出す健太。

「うん」と返事をして握手する翼。

2日目はグランドで50m走と持久走の測定をする。帝産ロッヂは標高が高いところにあるため、酸素が少なく苦しい。持久走を健太が苦しそうに走っている。純は、はるか前にいてトップ争いだ。後半、軽やかに抜いていく子がいる。翼だ。

「早いな、苦しくないのか?」とやっと息が整った健太は翼に話しかけると

「純君、早いよね……」

「あいつはなんでも別次元だ」と吐き捨てるように言う健太。

トレーニングセンターでジャンプ、ステップ、スピンと課題を出され、こなしていく選手たち。ジャンプでは翼が目立つ。複数ジャンプを綺麗に高く跳ぶ。ステップ、スピンもかなりよくなっている。

それを見て小さい時からスケートをやっている選手たちはよく思わない。吉田京子が田中薫に話しかける。

「あの娘、誰?」

「元オリンピック金メダリストのコーチに教わっている娘よ」

「なんか気に入らない」

「そうね、イライラする」と鈴木千夏も話に入ってくる。

エレメンツ演技が始まる。エレメンツ演技は、ジャンプ、ステップ、スピンと3つの技術だけをテストするのだ。

ますジャンプだ。次々と跳んでいく選手たち。純が跳ぶ。会場からため息が出る。高く美しい! 健太も跳ぶ。ダイナミックなジャンプだ。そして翼の番になる。

翼は思い切りよくダブルアクセルを跳ぶ。高く躍動感のあるジャンプ。着氷も成功。

「さすが、剛が惚れた選手だな。ピカイチだ」

五十嵐は剛を見る。剛は、無表情のままだ。

そしてステップ、スピンにも挑む翼。ステップとスピンはまずまずだった。

演技がすべて終わり剛のところへ行く翼。

「どうでしたか?」

「自分ではどうなんだ」

「ジャンプは練習どおりできたけど、ステップとスピンは満足いく出来ではなかったです」と少し悔しそうな顔をする翼。

「そうか」

「でも」

「でも何だ?」

「でも楽しかったです」とパッと明るい笑顔になる。

剛は少し微笑んで「それならOKだ。フリー演技が勝負だ」

「はい!」