そう言うと走ってアリーナに向かう健太。健太を降ろして家に戻ってくると、詩織は朝ごはんの用意と忠の弁当の仕上げにとりかかる。用意が終わるとダイニングテーブルに朝食を置いていく。
健太の父の良助、長男の隆、次男の忠もテーブルに着いて食事を始める。詩織も食事を一緒にとっている。終わると、
「それじゃ洗い物よろしくね。私は健太を迎えに行って学校まで送ってからパートのお店へ行くので」
と少しあわてている様子の詩織。
「わかってる」
出かける用意を始める詩織。あっという間に出ていく。家の近くの中華料理屋でパートとして働いている詩織。14時を過ぎてランチ時間の混雑が解消してきている。汗だくの詩織のところに交代の人が来る。
「詩織さん、もう上がる時間ですよ」
「もう、そんな時間!?」
と時計を見る詩織。
「すいません。いつも一番混んでるランチ時間に来れなくて」
「いいのよ」
と言いながら、手際よくテーブルにある皿やコップを片付ける詩織。ハンバーガーショップ。お客がカウンターに注文に来る。
「いらっしゃいませ」
レジで答えるのは、忠。注文されたハンバーガーをお客に渡している。横浜港に隣接している物流倉庫で多くの作業員がフォークリフトで荷物を運んでいる。その中に隆もいる。そこへ高く荷物を積まれたフォークリフトが隆の方に近づいてくる。
そのフォークリフトの前を横切る作業員。急ブレーキを踏むと荷物がバランスを失って横に落ちる。その下には隆が。
「隆危ない!」
「わっ!」
と叫ぶ隆。夕食の準備ができて健太、詩織と良助は、隆と忠を待っている。時間は、20時を過ぎている。テーブルには鶏のから揚げ、サラダ、ジャガイモの煮つけなど大盛りで並べられている。
「腹減った。兄ちゃんたち、まだかな」
と落ちつきがない健太。
「忠はあと5分くらいで着くってメッセージ来てるし、隆もそろそろ帰るはずだから少し待ちなさい」
「2人ともお前のためにバイト頑張ってるんだろ」
と良助。
「わかってるよ。お父さんにも、お母さんにも、お兄ちゃんたちにも感謝してる」
とすまなそうな顔になっている健太。そこに高校生の忠が帰ってくる。
「ただいま」
「お帰り!」
荷物を置いて、忠も席に着く。
「隆も遅れる時は、いつもメッセージくれるのに……」
と少し不安な顔の詩織。そこに電話がかかってくる。詩織が電話に出る。
「もしもし、伊藤でございます。えっ、隆が……荷物が落ちて怪我して病院に? すぐ行きます」