人事権は誰の手にあるかを見極める
ここで、改めて「人事」という言葉の意味について考えてみましょう。
私たちが一般的に、「人事」という表現を使う時にイメージするのは、昇格や降格を含む人事異動や、人事評価を決定する「権限」のことではないでしょうか。これは、いわゆる「人事権」に相当します。
人事権の意味をひも解くと、「使用者が、自己の企業に使用する人員について、採用・異動・昇進・解雇などを決定する権利」(出所:デジタル大辞泉)とあります。
「人事は水物」のような表現を用いる時にも、背景には、「人事権」の存在が見え隠れします。従って、絶大なる権限を有し、実際に、人事異動や人事評価を行うのも人事部である、と勘違いしてしまいます。
このあたり、よく混同して用いられるので、整理してみましょう。
人事評価など、人事制度に関する「仕組み」を作るのは、人事部です。しかし、仕組みを実際に運用して社員を評価するのは、「直属の上司」です。人事部が行うものではありません。
人事権は、あくまでも管理職である、直属の上司にあります。人事権を用いて部下を評価するのも、上司の大切な役割となります。なお、ここでいう上司という枠の中には、直轄部門の責任者や、経営幹部も含まれることになります(会社によって、多少の違いはあるかもしれませんが)。一方、人事部は「評価」、「報酬」、「等級」に関する人事制度を構築し、仕組みが当初の目的に沿って、きちっと運用されているかを確認します。次に、各部門の上司が評価した内容に基づき、「昇格」や「降格」、「昇給」や「減給」の手続きを行います。人事異動の「発令」も、そのひとつに過ぎません。