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教育相談部新設──「カウンセリング好き」のその先に……
この事例のような、話を聴くスタイルの生活指導主任は、「いじめ防止対策」という難しい局面だったとはいえ、第8章に出てくる「カウンセリング好き」だったと言えるのかもしれない。
やはり「いじめは許さん!」という強固な姿勢と厳しい指導が求められるのだろうか。翌年には生活指導主任を外され、校長の計らいで、教育相談部が新設されて主任に納まった。
教育相談通信『トリックスター』を発行したり、島外への研修旅行の際には、まさに「スクールカウンセラー制度」として始まったばかりの中学校を訪問し、学校における教育相談のあり様などを視察した。
残念ながら、諸手を挙げてスクールカウンセラーが迎えられている中学校は皆無と言っていいほどであり、「教育相談室」が物置と化し、お仕置き部屋のように生活指導にのみ使われている学校さえあった。
拙著『公立中学校における教育相談推進を妨げてきた要因の考察』(京都大学大学院入試論文2004年)のまとめにおいては、次のように締めくくった。
「東京都公立中学校において教育相談推進を妨げてきたと考えられる、最も大きな要因の一つは次の通りである。問題行動を起こした生徒等に対して、教師が何らかの働きかけを即座にしなければならないという、教育現場である学校の「空気」のようなものが存在している。
それは、以下のようなさまざまな要因が絡み合って作られている。
①脈々と受け継がれ、重んじられてきた訓育的生活指導によって生徒指導は行われるべきとする、学校や個々の教師の教育観。
②教師自身のパフォーマンスを追求する(生徒はその道具)、エゴイズムや自尊心。
③保護者や地域社会の期待・要望。」
ホッと一息
向夏の侯
毎年夏の訪れとともに思い出す、茶道の始祖と言える千利休という人の印象的な話があります。茶室へと通じる日本庭園の石畳に沿って垣根があります。
利休は、その垣根に朝顔の蔓をはわせます。夏の盛りの日、咲き乱れた朝顔の花のうち、真ん中に咲いた立派な一輪だけを残して、後の花を全て摘んでしまいます。