調査・研究から見つかった認知症予防法を知ろう

これまでの疫学調査の結果から、認知症予防で大事なことは、その危険因子となる生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など11種)の原因排除と、「知の貯金」を増やすことに要約できます。

最も推奨される生活習慣とは、体を動かす・脳を鍛える・血圧を正常域に維持する、の3つといえます。

認知症は既に述べましたように、アルツハイマー型認知症を代表とする「変性性認知症」、脳卒中による「血管性認知症」、慢性硬膜下血腫、特発性正常圧水頭症、脳腫瘍、甲状腺機能低下症など治療可能な「器質性疾患による認知症」の3つに大別されます。

疫学調査によれば、すべてのタイプの認知症は生活習慣病が危険因子であり、そこに年齢とともに進む老化が加わると、脳の変性が起こり発病します。このことを原因として、ほとんどのタイプの認知症で多くの場合に、アルツハイマー型認知症に移行することが分かっています。

したがって、他のタイプの認知症も、最終的にアルツハイマー型認知症を合併することになります。

認知症を予防しようとするならば、認知症の大部分を占めるアルツハイマー型認知症と脳血管障害とを予め防ぐようにすることが大切です。そのためには、この2つの疾患を発症させる危険因子を減らすことが大事になります。

アルツハイマー型認知症の危険因子は、遺伝因子と環境因子に分けることができます。近年の研究では、遺伝因子よりも環境因子による影響の方が発症に大きく関わっていると考えられるようになっています。

アルツハイマー型認知症の発症原因は、アミロイドβと呼ばれる蛋白だといわれています。アミロイドβは、健康な人でも加齢とともに脳に蓄積され、神経細胞を傷つけて脳を萎縮させることが知られています。

現在までの研究から、食事や運動などの生活習慣の改善によって、アミロイドβの生成が抑えられることも分かっています。

血管性認知症の原因疾患としては、脳梗塞と脳出血とが挙げられます。そして、これらの疾患の危険因子として、運動不足・肥満・食塩の摂取・飲酒・喫煙・高血圧症・脂質異常症・糖尿病・心疾患などが挙げられています。これらの危険因子は、生活習慣病の発症にも大きく関係しているといえます。

メタボと同様、ファストフードをはじめとする飽和脂肪酸の摂取過多が、認知症の発症リスクを高めると考えられています。

加工食品に含まれる亜硝酸塩や、食品の消毒に使用されるニクロサミドなどの食品添加物の摂取が、 アルツハイマー型認知症や糖尿病、脂肪肝の発症原因になるという疫学研究の結果が発表されました。

先進国に、アルツハイマー型認知症の患者さんが多いことから、生活習慣病と認知症には共通するリスク因子が存在するのではないか、と注目されています。

認知症の疫学研究から、環境的因子としての生活習慣の改善が、認知症の防止につながることが次第に明らかとなってきました。その中で特に注目されるのが、食生活の改善と運動習慣です。

認知症の予防には、発症リスクを高める危険因子を少なくし、発症リスクを抑制する因子の増大を促進することが大切です。

これまでの大規模追跡調査で、危険因子と抑制因子とがある程度分かってきました。その結果、病気の発症を先延ばしし、進行を遅らせることが可能となってきた、ということです。