受付で記帳をお願いされ、名前を書き早速写真を一枚一枚観て回った。私が訪れたときは自分だけだったが、すぐに二、三人のお客が訪れた。
知り合いなのか、彼女は親しく楽しそうに話をしていた。いろいろな風景写真が飾られているなか一枚の写真が目に留まった。それは田舎の田園風景を走る黄色いローカル列車が写っている写真だった。
澄み渡る青空のブルーに田園の淡いグリーン、そのなかを走る列車の鮮やかなイエロー……あの菜の花畑を思い出していた。あの風景と色合いが似ているなと見とれていた。
それからほかの写真も観て回った。親しそうなお客がいたのでそっと写真展をあとにした。彼女は私を見て笑顔で、
「ありがとうございました」
「ありがとうございます」
私も振り返り笑顔で答えた。帰りの電車で、彼女と写真の一枚一枚を思い返していた。一週間後の休日、波乗りへいくのをやめ、私はまたあの書店へ足を運んだ。
あの写真展がまだやっていることを期待して。あの彼女にまた会いたい、その一心だった。書店に着いたものの、本を見るどころか妙に緊張し、写真展がまだやっているのか気になって仕方なかった。
よしいこうと決め、書店を出てあの写真展がやっていた場所へ足を向けた。
あの写真展はまだやっていた。
表に立てかけてあったイーゼルに書いてある「本日まで」の文字が目に入った。安心すると同時に緊張感が高まったが思い切って写真展のスペースへ入った。