その頃になるとテレビ宣伝を行っている大手メーカーが競ってカップみそ汁を発売し、競争が激しくなった。コンビニをはじめ大手販売店のカップみそ汁が大手メーカーの製品にとって代わり、徐々に市場は奪われていった。

私と言えば過去の栄光に浸り、また内部留保の金もあったので教育事業部を別会社にしようと一生懸命だった。まったく危機感が薄かった。

バブル経済の波に乗り、不動産購入で借金地獄に突入。

教育事業に手を出した前年の一九八八年には、銀行から上野ビルディングに大口の融資話があった。

大田区千鳥町に借りている営業所の近くに、道路に面した百坪の空地があった。駅に近く営業所にはもったいないくらいの土地である。不動産会社に交渉したら坪五百五十万円と言われた。

あまりにも高いので断るつもりでいたら、銀行の支店長が「融資するから買ったらどうか」と言ってきた。

しかし、そこにビルを建てるとなると採算が取れないし、返済に苦しむことは目に見えていた。

そこで「坪四百万円なら買いたい」と相手に伝えた。断りの返事が来た。諦めきれなかったが、高過ぎたので諦めざるを得なかった。

ところが、一年近く経過した頃、突然、不動産会社から私に電話があった。

「買い手がついて現在交渉に入っている。坪四百五十万円だが買う気があるなら先方を断っても良い」

との話であった。早速、銀行の支店長に相談したら「融資するから買ったほうが良い」と言われた。

坪五十万円高かったが、買う決断をした。

なぜなら支店長から「上物のビルの建築費用も貸すから任せてくれ」と言われたからだ。後でわかったのだが、この土地は坪四百五十万円でも売れなかった物件で、私は不動産会社のトリックに引っ掛かったらしい。

契約した一九八九年はちょうどバブルが始まった頃で景気が良く、バブル崩壊の一九九三年まで土地や株が急上昇していた。

参考までに、現在の相場は三百万円くらいと聞いている。