積極的な「女子社員の登用」が、会社の業績向上に貢献
考えてみれば、私は女子社員には大変恵まれた。一九八〇年代、日本の会社は女性の事務職が多く、出世も男性優位であった。大学に行く女性が多くなり、女子大生は就職難になっていた。男子の優秀な人材は大会社に採られてしまい、中小企業は雇うことが難しい。この社会の構図は現在も変わってはいないのではないだろうか。
私は男性が採れないのなら女性を積極的に採用しようと考えた。R社の協力を得て説明会を開くなどして採用活動を行った。失敗も多かったが、女性の活用に私自身が目覚めたことで、上野食品は女性の活躍が業績向上に大きく貢献したことは間違いない。
ただし、女性だからと言って男性と区別はしなかった。言うべきことはしっかり話した。また、仕事ができるからといって贔屓はしなかった。特に女性には仕事ができようができまいが常に等距離で接した。
だから夜遅くまで女性と一緒に仕事をしていても変な噂は起こらなかった。
昇給の返納を申し出た経理主任のKさん。シンガポールで結婚した女子大新卒の営業担当のMさん。シングルマザーで営業課長のWさん。男性は別にして、特に彼女たちには大いに助けてもらったと感謝している。女子社員の何人かは定年まで勤めて退職しているのも有難いことである。
社員が辞めずに長く勤めている理由として、考えられることがある。それは、毎月一回、全社員で会社の近所を掃除していて、地域の人たちに喜ばれていること。月次決算書を社員に公開し検討会を開いていること。業績が良かったので十一年連続で海外社員旅行を行ったことなど。
それらにより社内に連帯感が生じていたと思われる。海外旅行は、土日を挟んで四日間の旅であったが、ラスベガス、ハワイ、グアム、オーストラリア、香港、タイ、ベトナム、中国、韓国などAクラスの豪華な旅行を行った。勤めているとなかなか海外旅行に行けないので熱烈に歓迎された。私は常に「会社は、働く人のやりがいと生活の安定のためのもの。金儲けは手段であって目的ではない」と考えて経営をしてきたつもりである。