里奈はがっかりして家具や電気製品の裏の壁についたほこりを取る掃除をした。
「あの、根本さん、タンスとタンスの間から、大事なものが出てきましたよ」
「え~~っ? 本当ですか?」
「新聞紙に包まれた、何かお金のようなもののようですが……」
「あの、ありがとうございます。もしかしたら私がずっと探していたものかもしれません」
「こちらです」
買い取り屋はその場所から離れて隣の部屋に移った。そして里奈は恐る恐る新聞紙を広げてみた。
――間違いない、あのときの百九十万円だ!
そして束になった方の帯を見ると、そこには父親の命日が書いてあった。
「平成21年11月24日」
と書いてあった。バラになっている方は数えると九十万円あった。
「あの、新聞紙の中に百九十万円ありました。助かりました。本当にありがとうございました」
と里奈が言うと、買い取り屋は、
「よかったですね。タンスをそのままバラさずに持って行ったら気が付かなかったところでしたよ」
と言った。黙っていれば九十五万円ずつ貰えたのに正直な人たちだ。年からいえば二十代後半から三十といったところだろう。
里奈は買い取りの二万円の他に二人にお金を見つけてくれたお礼として一万円ずつ渡した。それでも何度も返して来たが、無理やり渡した。
しかし、その話は佑にも誰にも言わないでいた。何故かは自分でもわからないが、自分の道楽のために使うのではなくて、本当に使うべきときのために取っておきたかったのかもしれない。