ぼくは、あわててトワのからだの上にのりました。
『早く、あたためなきゃ!』
手足をのばして、ぼくのあたたかいおなかを、トワのからだにくっつけました。
それからぼくは、とわのむねに、耳をあてました。
『へんだな、音がしない』
ク~ン、ク~ン…。
いつも聞こえてくる、トックントックンという音がしません。
トワのからだは、いつまでたっても、あたたかくなりませんでした。
「クロリ、トワは死んじゃったのよ」
お母さんが、ぼくを見て、もっとはげしくなき出してしまいました。
ぼくには、人間のことばはわかりません。
でも、もう、ぼくにもわかってしまいました。
『きみ、死んじゃったんだね』
ぼくは、トワにむかって、小さくうなりました。
『きゅうに死んじゃうなんて…。ぼく、さよならを言う間もなかった』
ク~ン、ク~ン…。
のどのおくが、やけつくように、くるしくなってきました。
『きみと、もっとあそびたかった!』
グルルルル…。
『きみを、まもってあげたかった!』
ウォォォォォォーン…。
とうとうぼくは、こらえきれなくなりました。やくそくをやぶって、思いきりほえてしまいました。
みんなも、ぼくといっしょに、大声でなきつづけました。
やがてカーテンのすきまから、金色の朝日がさしこんできました。
「あっ…」
お母さんが、小さくうなりました。
トワの目から、ひとつぶのなみだが、こぼれおちたのです。
「きっと、クロリの大きななき声が、とどいたのね…」
ふしぎなことに、トワのかおは、少しわらっているみたいでした。