ぼくは小さな子にふくらんだふうせんを渡すことができたんだ! 小さな子は「ありがとう」とニッコリ笑うと、ママのところへ戻って行った。
ぼくは〝弱虫ふうせん〟がふくらんだことにびっくりしながら、とても嬉しかった!
そして今まで知らなかった力が湧いてくるのを感じた。
ぼくには、小さい頃にたくさんお世話をしてくれた大切なおばあちゃんがいる。おばあちゃんは花が大好きで、花を探しによく一緒にでかけた。優しいおばあちゃん。
でも今、おばあちゃんは病院のベッドで寝ている。お見舞いに行くと、ぼくの名前を呼んでニッコリと笑ってくれる。そんなおばあちゃんのお見舞いからの帰り道は、いつも悲しくて涙が出る。
だって、大切なおばあちゃんとのお別れが、もうすぐやってくるのだから……おばあちゃんは、どんな時も優しかった。
たくさん一緒に話をしたし、たくさん一緒に笑った。ぼくが何かを怖がる時には、すぐに手をギュッと握ってくれた。他にも言いつくせない思い出がたくさんあるのに……イヤだ! イヤだ!!
「泣いている場合じゃない! ぼくがこれから、おばあちゃんにしてあげられることって……何!?」
「そうだ!! ぼくは、おばあちゃんを最後の最後まで、笑顔にする!!」
急いで家に帰り、部屋の中を見渡してみた。
「何か……おばあちゃんを幸せな笑顔にしてあげられるものは?」……たくさん散らばったままの〝弱虫ふうせん〟が目に飛び込んできた。
ぼくは今までほうっておいた〝弱虫ふうせん〟を拾い上げる。
〝弱虫ふうせん〟を見ると、ぼくは自分を弱虫って思う。
でも……「弱虫のぼくのままでおばあちゃんとお別れするなんて……イヤだ! 強くなって、おばあちゃんを最後まで、幸せいっぱいの笑顔にするんだ!!」
フーッ! ぼくは夢中で〝弱虫ふうせん〟をふくらませた。伝えきれない位たくさんあるおばあちゃんへの〝ありがとう〟の気持ちを込めて精一杯の力で!
「全部、ふくらめ!! 〝弱虫ふうせん〟!!」
……気がつくと、ぼくの部屋は色とりどりの大きくふくらんだふうせんでいっぱいになっていた!
「ぼくはもう弱虫なんかじゃない!! こんなにたくさんの〝弱虫ふうせん〟をふくらませることができた!」
もう弱虫じゃなくなったぼくは、これから大切な人の力になれるように強くなる!
「ねえ。おばあちゃん、待っててね!」