今度は、後輩が転勤することになった時の話です。彼は、与えられた業務を計画的にきちっとこなす、いわゆる仕事のできる社員でした。しかし、上司の評判は芳しくなく、ことあるごとに呼ばれては、説教を受けていました。

今でいう、パワハラみたいなものでしょうか。席に戻った時の、「何で僕だけこんな目に遭うんだろう」と言いたげな、悔しさに満ちた表情はよく覚えています。

その後輩が他部門へ異動して間もなく、本人と話す機会があったので、新天地での近況を聞いてみました。すると、返ってきた言葉は、

「今度の職場には、とても満足しています」

そこで、もう少し詳しく聞いてみると、

「新しい上司は、指示も明確で、やるべきことがはっきりしていて、仕事がしやすいんです。それに、特別なことがない限り、定時で帰れるし、何といっても、あの無意味な残業がないんですよ」と、言います。

裏返すと、前の上司の指示は、どこか曖昧で、業務の範囲が定まっておらず、おまけに、付き合い残業も多かったということでしょうか。同じ職場での経験から、このコメントはおおむね的を射ていたので、妙に納得してしまいました。

その後輩の新しい上司も、実はよく知っている方でしたので、後日会話する機会があった際に、彼の評判を聞いてみました。すると、その上司いわく、

「いやあ、彼はとても優秀で、仕事も良くできるので、彼が来てくれて、本当に助かっているんですよ」

新しい職場での後輩の評価は、前とは違って、とても良いものになっていました。まさに「正反対」とは、このことです。