かあさんが
かあさんが亡くなって いく日もたつのに
なかなか寝つけない
一緒に暮らした年月よりも
離れて暮らす年月の方が長くなった
妻になり 子をもち 孫ができ
六十五歳を過ぎた今だからこそ
かあさんの生き方 考え方
かあさんの強い一言が 心に響く
かあさんは床に着くようになってから
一度も電話をかけてこなかった
弱った親の姿
弱った声を
子供に聞かせたくなかったのか…
夜中
受話器を握ったかあさんの元気な声が聞こえてきそうで…
たしかに かあさんの声が聞こえた
「美智子 何してる」
いまだから、いまになってから、思い出すあの眼差し、あの温もり
いまだから、いまになってから、叶わないことだけど、ただ願う――
母という存在をなくして、心は声なき言葉を語りだす。
失ってから、ふたたび得る。ひとすじの救済への過程。
「かあさん、ありがとう」
第21回 日本自費出版文化賞「詩歌部門賞」受賞作品を連載でお届けします。
かあさんが亡くなって いく日もたつのに
なかなか寝つけない
一緒に暮らした年月よりも
離れて暮らす年月の方が長くなった
妻になり 子をもち 孫ができ
六十五歳を過ぎた今だからこそ
かあさんの生き方 考え方
かあさんの強い一言が 心に響く
かあさんは床に着くようになってから
一度も電話をかけてこなかった
弱った親の姿
弱った声を
子供に聞かせたくなかったのか…
夜中
受話器を握ったかあさんの元気な声が聞こえてきそうで…
たしかに かあさんの声が聞こえた
「美智子 何してる」