何十年も
生きていることに感謝の 気持ちが綴られていた
何度か
何度か連れ出した外食
その度に かあさんはよろこんで
「とうさん こんなところで食事できてうれしいね」
「とうさん おいしいね とうさん ほれ こぼしてるよ」
ありがとうと言いつつ お金のことを気にしていた
もったいない が口癖だった
いまだから、いまになってから、思い出すあの眼差し、あの温もり
いまだから、いまになってから、叶わないことだけど、ただ願う――
母という存在をなくして、心は声なき言葉を語りだす。
失ってから、ふたたび得る。ひとすじの救済への過程。
「かあさん、ありがとう」
第21回 日本自費出版文化賞「詩歌部門賞」受賞作品を連載でお届けします。
生きていることに感謝の 気持ちが綴られていた
何度か連れ出した外食
その度に かあさんはよろこんで
「とうさん こんなところで食事できてうれしいね」
「とうさん おいしいね とうさん ほれ こぼしてるよ」
ありがとうと言いつつ お金のことを気にしていた
もったいない が口癖だった