エッセイ 日本画 2021.03.09 生きていることに、感謝の気持ちが綴られていた かあさんの かあさんの顔から 汗がしたたり落ちる 夏の日 「タマネギもキャベツも 店で使うだろ いっぱい持ってけ!」 店でタマネギの皮をむきむき かあさんの作った野菜を 店でお客さんに出せることに 涙が 目が痛い 目が痛い
エッセイ 『逆境のトリセツ[パラリンピック特集]』 【新連載】 谷口 正典,益村 泉月珠 右足を切断するしか、命をつなぐ方法はない。「代われるものなら母さんの足をあげたい」息子は、右足の切断を自ら決意した。 失うのは生命か右足か究極の選択まだ寒さが残る三月。午前二時。ピンポーン。「こんな時間に誰?」上着を羽織りながら玄関を開けた。そこに立っていたのは、背筋を伸ばした警察官だった。「正典さんのご家族の方ですか」「正典の母です。どうかしたんですか?」「正典さんが、国道二号線でトラックとの事故に遭いまして……」「え……、正典は無事ですか?」「現在、病院に搬送中です」動転した母は、兄と一緒に俺が運ばれた病院…
小説 『新西行物語』 【最終回】 福田 玲子 「誰か…」声が響いたその時、息が止まるかと思った。御簾をはらりとかきあげて、美しい人が現れて… 【前回の記事を読む】どぎまぎした。いきなり美しい傀儡女にひざまずかれ、「何という幸せでございましょう。本当にありがとう存じます」と…鈴を振るような笑い声が御簾(みす)から聞こえた。周りの女房達も、巡(めぐ)り合わせに驚いていた。堀川局(ほりかわのつぼね)が、乙前(おとまえ)を立たせて衣装を直してやりながら声をかけた。「それにしても乙前(おとまえ)は、監物(けんもつ)様はたいそう厳しいお方だった、…