久しぶりの快晴の中、私は歌を唄う

私はしばらくいっしょに唄いつづけていたが、それはあの天狗岩用水の滝の方から聞こえてくるようだった。間もなく私は思わずその声のする方へ行き、柵を乗り越えて堤に立った。

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しかしその声はすでに滝の下の圧倒されるような瀑音に飲み込まれてしまっていた。そしてその滝つぼの白い泡の中では、さながらあらゆる人間の運命を自由に操る無数の悪魔たちが、なぜか私に対して一斉に怒号を浴びせているかのような轟音が響き渡っていた。

だがその最中、やっとそこから目をそらしてふと見上げると、私を救い出してくれるかのように美しい虹が滝の上に現れていたのである。私は滝のしぶきを浴びながら虹の彼方から招かれているかのように、堤を下って行った。

しばらく歩き続けていくと、やがて水は澄んできて静かに落ち着き、白い小石の上をさらさらと流れていた。水辺に沿って虫の音や小鳥たちの声と共に、色々な可愛らしい花が朝露を浴びてキラキラ光り輝いていた。

それから間もなく、私は堤から森に通じる小道へ入っていった。そのまま少し歩いて行くと、しんと静まり返った森の静寂に包まれた緑の木々の中で小鳥たちが囀り、私に何かを語りかけてくるようだった。

しばらくすると、梢の間から壁をツタに覆われた灰色の古い石造りの館が目に入ってきた。ゆっくりとその屋敷に近づいてみると紋章のついた大きな茶色のドアが見えた。

その前にそっと来てみると、何げなくドアノブに触れてみたい、と思ったちょうどその時、意外にもドアはゆっくりと内側から開き始めた。するとそこに、待っていたように、一人の可愛い少女が私を見つめながら笑みを浮かべて現れたのである。

その時、彼女の着ていた純白のドレスが朝の太陽の光をいっぱいに浴びて美しく眩しかった。間もなく彼女は言った。

「きっとあなたは私に会いに来てくれると思っていたの、だってすこし前、私たちはいっしょに楽しく歌を唄ったのですものね。さあ、どうぞ中へお入りください」

まだ幼い私は、はじめ彼女と挨拶を交わすのもやっとで、あまり言葉もみつけられずにそこに立っていた。しかし間もなく彼女は私については、もうすべてを知っているかのように居間に私を通してくれたのである。

そのとき彼女は私と同じくらいの歳だと思った。部屋は明るく、窓の両側に下がっているレースのカーテンに陽が射して、それは木漏れ日のように淡いブルーに輝いていた。

その近くには大きな丸いテーブルがあって、美味しそうなくだものや、サンドイッチ、ケーキなど、それぞれが違った形のお皿にきれいに並んでいた。