聖護院(しょうごいん)から西本願寺
聖護院は、修験道の寺院である。平安時代から法親王が門跡として入る格式の高さを誇っている。だが、僕の頭の中では、聖護院イコール京都の代表的な土産の菓子「八ツ橋」という方程式ができ上がっていた。これまで、聖護院を寺院よりも、土産の菓子としてのイメージが強かった非礼を詫びるための参拝に向かう。
加えて、聖護院と八ツ橋の関係を解明したかったのだ。たぶん、昔、聖護院の僧が中国に仏教留学をした際、そこで食べた美味しい菓子を帰国後に、周囲の人たちからの、批評や励まし、協力を得て和風にアレンジしてでき上がった菓子が八ツ橋の発祥となったのではないか。と、NHKの大河ドラマとして放映されてもいいようなドラマチックな想像をした。
最寄りのバス停が、平安神宮前だろうと当たりをつけて降車したが、そこから二十分歩かねばならなかった。朝から歩き通しのため足も限界に近づいていた。お詫びの行脚(あんぎゃ)と思えば、これしきのことと気力を振り絞る。
トボトボ歩く僕の目に衝撃的な景色が飛び込んできた。平安神宮のそばには、琵琶湖疎水の分流である岡崎疎水が流れている。
琵琶湖疎水とは、幕末の戦災と明治維新による東京遷都により衰退した京都を復興させるため、特に産業を復興させようと、明治時代に琵琶湖から京都まで大規模な土木工事を敢行して作られた運河である。
その疎水の中を観光遊覧船がゆったりと運航しているではないか。二度見に止まらず何度見もしてしまった。京都市内を船で観光なんて、僕の頭の中ではありえない光景だ。調べてみると、この観光遊覧船は、二〇一八年から本格運航を開始している。三月から六月までが運航期間で、滋賀県の大津から京都の蹴上まで約一時間で結んでいる。疎水の両岸の満開の桜を見ながらのちょっとした船旅。なかなか雅じゃないか。いつか乗ってみたいねと女房と話す。