現代セルビア文学におけるホラー、SFのジャンルの旗手として活躍しているゴラン・スクローボニャ。衝撃作『私たちはみんなテスラの子供 前編』を日本初公開します。
第一章 カンタレラ! カンタレラ! 一九一九年六月
二周ドライブした後に、アンカは車をカレメグダン要塞の下の道のあたりの高い電灯の下に停めた。それから二人は席を交換した。
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アンカはグリマルディに非常にシンプルな車の操作法を教えた。そのイタリア人がジェノヴァの自分の土地で車やトラックを運転する場合と全く同様な古典的操作法であった。グリマルディは、最初は恐る恐る、それから完全に自信を持って、貨物車が稀に通り過ぎていく道を運転していた。そしてついに、アンカが指示した方向、暗いドックの方向にハンドルを切り、川に程近いところに車を停めた。
二人は、澄んだ夏の空の下でお互い見つめ合いながら、少しの間、座って休んでいた。それからアンカは開閉レバーをつかんで車のドアを開けた。