その熱からやっと解放されたのは、一週間ほど経ってからだ。夕方の風が涼しかった。西日が机の上のサムを照らしていた。サムは黙っていた。

鴇子の笑顔がよぎる。彼女が遠い世界に行ったような気がした。生意気な鴇子が、高慢な鴇子が、くりくりと大きな目の鴇子が、ころころと可愛く憎たらしかった彼女が、遠くなっていた。

太郎、弱くて、そのくせ強がりで、鈍感で、鈍重で、不器用で、しょうもない彼。彼はいつもぼくのそばにいた。いつも金魚の糞のようにぼくにつきまとっていた。つるんで遊んでいるときにも、彼をまいてしまったことが何度かあった。彼はそんなときにも、何も感じていないかのように、笑っているだけだった。ぼくはそんな太郎を内心、徹底的にやっつけてやろうとしていた。いつか泣き顔を見てみたいと思っていた。しかしもう太郎は、ぼくの家に入り浸ることもないだろう。

英二はぼくにとって、もっとも疎ましい存在だった。彼のプライドを、彼の大人びた行動を、妬ましく思い、気後れもしていた。しかし、その気持ちを思う存分彼にぶつけることができたのだ。

もはや、英二とも街でつるむことはないだろう。一時のぼくの中の昂揚は何だったのだろうか。そう、ぼくは根拠のない自信に満ち溢れていたのだ。友達を見下し、嫌悪し、心ない言葉を浴びせ、ひとりの世界を楽しんでいた。

病み上がりの気だるさから、ぼくは立ち上がることもせず、ひたすら友、いや友であった人々のことを思い出していた。