出会い
「ピポーピポーピポー」
けたたましく鳴り響くサイレンが大学病院の救急口に入ってきた。実業家で大富豪の織田が脳梗塞で運ばれてきたのだ。
織田は80歳、日々元気に過ごしていたが、突然「頭が割れるように痛い」と訴えた。脳梗塞である。
家族は慌てて救急車を呼ぶ。幸い、処置が早く後遺症も無く快方に向かっている。
この病院は大学の付属病院で、織田の主治医は脳外科では「神の手を持つ」と言われている本多教授である。入院して4日ほどした朝、本多が若い担当医と4名の看護師を連れて回診してきた。カルテに目を通しながら担当医と何やら話している。
「織田さん、早期治療ができ、どこにも後遺症が出ませんでした。良かったですね。このままですとリハビリの必要もありませんから、後10日ほどで退院ですね」
それを聞いて織田はにこやかに、
「先生ありがとうございます。先生のおかげです」
本多は織田の脈をとりながら、
「これからは健康に気を付けて、軽い運動と食事療法が必要です。退院の日までに食事療法士にこれから注意すべき食事について説明させますので時間を取ってください。奥さんもご一緒に聞いていただきたいのでご連絡しておいてください」