ぼくは笑いをこらえていた。ぼくの中のこの心地よさは何だろう。人の心を玩ぶとはどんな楽しみなのだろうか。サムはぼくに語りかける。
「キミノ、ココロノママニ、スレバイイノサ」
サムの碧いガラス玉の眼が、ぼくの心を刺し、そしてくすぐる。ぼくの企みは成功したと言える。
太郎はぼくに話しかけてくることはなかったし、目が合いそうになるとさっと逃げるようになった。太郎と関わることがなくなったことで、気持ちがずっと楽になった。
鴇子とも話をしていない。彼女も黙ってぼくを睨んでいることが多くなった。しかし、それには少しだけ腹が立った。
「ククククク」
どんな自信なのだろうか。何かを失っているという自覚はある。そしてそれが、いかに大きいかを分かっているつもりだ。しかしそれ以上に、ぼくは孤独であることを愛した。
「キミノ、ココロノママニ、スレバイイノサ」
サムの言葉は、ぼくの心を代弁し、ぼくを解放してくれる。不満や鬱憤、嫌悪、傲慢、嫉妬、怒り、それらのものを解放してくれる。すべてを吐き出させてくれる。
ぼくはぼくのままに生きればいいのだ。自分を解放すればいいのだ。サムだけがぼくを守ってくれている。
「ククククク」