――あーあ、もうやんなっちゃったな!
沙也香は大きくため息をついた。考えるのをやめて書斎の机に突っ伏すと、頭がくらくらするような疲労感に襲われた。考えてみれば、朝から満足に食事も摂らずに夢中になってノートを読み続けていた。疲れるのが当たり前だ。「今日はもう寝ようっと!」意識的に大きな声でつぶやくと、散らかった机の上を片づけはじめた。
明日は持ち帰った他の文献を読みはじめようと考えたとき、ふと不安な思いが心をよぎった。─こんなことをしていて、ほんとうに教授の新発見にたどりつけるのかしら?
読まなければならない資料は、それこそ山のようにある。それを読むだけで何年もかかるかもしれない。そして読んだからといって、教授の新発見にたどりつけるという保証はどこにもないのだ。いやむしろ、山科教授にいわれたように、素人にそんなことができると考えるほうがおかしいのかもしれない。思わずため息をついたとき、W大の磯部准教授の顔が浮かんだ。
そうだ、磯部准教授に連絡を取ってみよう─と考えると、わずかに心が軽くなった。また気分が重くならないうちに、沙也香はベッドに向かった。