「言い過ぎって……少しは自覚してるんだ。小学生並みの体でバカなお前に、女が振り向くはずないって言ってるんだよ」
「イイゾ、イイゾ」
太郎は目にいっぱい涙を浮かべ、ぶるぶると震えている。
「どうした、何か言えるか……黙って帰って、鴇子を思ってセンズリでもかいてろ」
「おれは、おれはそんな気持ちなんて持っていない!」
青ざめて、太郎は叫んだ。
「へえ、じゃあお前は、ほんの少しも鴇子にエッチな気になったりしないんだ」
太郎は今度は顔を真っ赤にさせた。
「おれはそんな気持ちなんかない。そんな気持ちじゃないんだ」
ぼくは思わず吹き出し、腹をよじって笑ってしまった。太郎は泣きながら走り出していた。何事が起きたのかといった顔で、小学生が太郎を見送っていた。
「ククククク」
サムの声が聞こえた。ぼくはますます愉快になった。爽快だった。
ぼくは心の中のサムの言葉に従っていた。変な言い方だが、サムに励まされていたと言ってもいい。
ぼくは、まず一歩を踏み出したかのような気がした。しかしそれは、冒険ともいえない冒険の始まりかも知れない。ぼくにはどこか冷めた部分もある。