図書館
ひまりはノートとシャープペンを鞄から出すと、まず分厚い医学辞典を手にとった。埃臭いような感じがあり、ずっと誰にも読まれていないのでは無いかとアッキーはすぐに思った。
アッキーは思わずくしゃみが出たが、ひまりはそんなアッキーにはお構いなしで何も言わずにページをめくろうとしていた。その分厚い医学辞典はあいうえお順に病名が並んでいるようだった。
「あ、か、さ、さ、し、す、せ、そ、そあ、そい、そう~そうき、そうきょ、そうきょく。これかな~? これだ、これだ、そうきょくせいしょうがい、これだね」
ひまりはやっと見つけたと喜んでいるようにも見えた。そして、
「こんな漢字初めてみたね、学校で習ったっけ? 難しい漢字だね、すぐには書けないね。それに、これで『そうきょく』って読むんだね」
小さな声だがひまりはアッキーに盛んに声をかけてきて少し興奮している。そして、ノートに書き写し始めたひまりを横目で見ながら、アッキーは何も考えられずに、ぼっ~としていた。
たいした病気じゃないさ、と心の中で何度も繰り返していた。ひまりのノートの白いページは次第に黒く書き込まれていった。
双極性障害(そうきょくせいしょうがい)
双極性障害は、古くは(躁うつ病)と呼んだ。双極性障害は、気分が高まる『躁状態』と心のエネルギーを失う『うつ状態』が繰り返し現れる、脳の病気です。