2015年7月:「地方創生」、発想の転換を

国が「地方創生」を声高に叫んで1年が経とうとしている。昨年8月に都合で出席を辞退したが、総理官邸で安倍首相と「地方創生」について懇談することになっていたこともあり、その思うところを述べてみたい。

安倍政権が掲げる「地方創生」の目的は、地方の人口減少・衰退対策と東京一極集中の是正である。現に2014年に総務省が発表した東京・埼玉・神奈川・千葉の4都県の転入超過の合計は10万9408人であり、19年連続で転出を上回り東京圏への一極集中は加速している。東京圏以外で転入が転出を上回ったのは、宮城・愛知・福岡の僅か3県に過ぎない。

国全体の人口減少については、20世紀後半のわが国の人口爆発こそが異常であったという分析もあり、それほど悲観すべきことではないが、地方の人口減少については国の行く末に重大な影響を及ぼすので国が焦るのも当然だ。勿論地方も焦っている。

そこに増田寛也元総務大臣が中心となってまとめた、いわゆる「地方消滅論」が、ただでさえ自信をなくしている地方に追い打ちをかけた。増田氏とは互いに「21世紀臨調」の委員として議論を戦わせた仲だが、「地方消滅」という冷たく突き放した言葉に私もたじろいだ一人だ。2040年迄に1668市町村のうち半数以上の896が消滅の可能性があるというのだ。

ちなみに原発事故の影響でこの推計の対象から福島県の市町村のみが全て外されたが一番厳しい状況に置かれているのは誰もが知るところである。政府は「地方創生」の推進機関として「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げ担当大臣も置いた。

そして地方は努力が足りない、予算は付けるからアイデアを出せとハッパをかけている。