ユヒトが言うには、吾妻川沿いに二十ばかりの集落があるらしい。規模は大きいところで百人、小さいところで二十人程度。さかんに交流し合う集落もあれば、イマイ村のように控えめにしているところもある。

笹見平はこれまでイマイ村としか交流をもったことがなかった。そこで二人は、最初にイマイ村の名前を前面に出してから、笹見平への招待を伝えることにした。

「まずは穏便な集落に行こう」

ユヒトは砂地に地図を描いた。

「イマイ村から吾妻川に出て、渡ってしばらく行くと、鎌原というところがある。ここの人たちはとても優しい。昔、この近くで迷った時に助けてもらったことがある。顔も覚えているから話をしやすい」

林は納得し、「鎌原の人たちにお願いして、他の集落を誘い合わせてくれたら助かるんだが――」

「そうだね。で、最後だが」

ユヒトは眉をひそめた。

「川を渡って東の山奥に、荒くれ者の集落がある。ここは正直仲間に入れたくないが、仲間外れにするとあとあと因縁を付けられかねない」
「ユヒトは面識あるの?」
「無いよ。だからここには長老の言葉を携えていくつもりだ」