公庫の融資、県の補助金交付事務といった実務経験をもとに、日本の金融と補助金の問題点を考察していきます。当記事では補助金をめぐる諸問題について、筆者が語ります。
私が若いころ、法令違反はありふれたものだった
政治家はなぜ「口利き」をするか。それは見返りがあるからだ。多額の政治献金やパーティ券の購入がすぐには期待できなくても、依頼されれば断りきれず「口利き」をすることも、もちろんあるだろう。
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そのような場合でも、つまり、すぐに目に見えるリターンがなくても長期的に見れば何らかの見返りは期待されているはずだ。そのうちの一つは選挙であることはまちがいない。
補助金Aの受給者である地方公共団体は、その選挙の際に補助金という「見返り」を期待して、政治家のために動くことがある。それは「逆方向の口利き」といえないこともない。
前掲『補助金の政治経済学』の「2章 補助金と政治・行政」には次のような記述がある。
《たとえば一九八九年の参議院選挙の際に起こった和歌山県中津村の村議会ぐるみ選挙違反事件は、農村むけ、土木・農林補助金などの政治性の意味をよく示している。この選挙で同村の村議会議長は、他の議員および村の有力者たちに現金を渡して自民党候補への票のとりまとめを依頼し、計六人の議員が買収・被買収容疑で起訴された。自主財源が一般会計収入の一割にも満たぬ過疎の同村には新過疎法による過疎債や補助金の継続がどうしても必要であり、それには自民党に頼るほかないので、郡内の他町村に負けない投票率・自民党投票率を示しておきたいというのが、その動機であったという。》