違ってきた未来
マリファナの売買は順調だった。裏サイトで暗号化した情報を出し、禅の店で物を売り買いする。店の売り上げはさっぱりだったが、マリファナの売り上げで禅と剛史は潤っていた。
「どうだ、禅? こんなおいしい仕事は無いだろ?」
「本当ですね、真面目に働く事がバカバカしいですね」
そう言って笑った禅だが、心の中は不安だった。それはかつて、夢の為に日々努力していた自分が、今はただ漠然と生きている事への焦りだった。
“努力しなくていいのか? 練習に行かなくていいのか? いや、いいんだ……もう自分はバスケットを辞めたんだ!”
そして、毎日自分に問いかけていた。
“本当に、これでいいのか? いや、これでいいんだ……世の中の多くの人が苦労して少ない金を稼いでいる。楽をして金を稼げるなら、それに越した事はない。それに欲しい人に欲しい物を売って何が悪いんだ?”
そう正当化し、自分に言い聞かせた。剛史が言った。
「なあ、もっと稼ぎたくないか?」
「え? もう十分稼いでいるじゃないですか」
「お前、こんなはした金で満足しているのか? もっとでっかく稼ぐんだよ。思いっきり稼いで、一気に金持ちだ! もっと金が有れば、みんな媚びるぞ」
禅は、そんな事はどうでも良かった。