“どんなに心が綺麗でも、外見が美しくなければ価値が無い!”
それはまさに、華やかな世界で生きてきた、禅らしい考え方だった。そして、美しい女を見ると自分の物にしたかった。
だから、そういう女を手に入れてきた。実際、そういう女たちが近づいて来た。
“もっと良いモノを手に入れたい!”
そんな衝動に駆られた。だから、そんな女しか集まらないのは当然の結果だった。
禅は満たされていなかった。容姿はソコソコだが、プライドが高く心が醜い女たち……そしてバスケットを失い、輝きを失った自分……誰と一緒に居たところで、満たされる事はなかった。
“心を奪われるような女性に出会い、本当の恋をしたい!”
そう思うようになっていった。
「今日は一人にしておいてくれないか?」
「他の女に会うんでしょ?」
本当にうっとうしかった。思わず切れてしまった。
「だったらどうなんだ?」
「………」
電話の向こうで彼女は泣いていた。
「私が悪かった、ごめんなさい……ゆるして……」
「じゃあ、切るよ」
「切らないで!」
禅は電話を切った。それから何度か電話が鳴ったが、禅はそれを無視した。禅はむしゃくしゃして、飲みに行く準備をした。
「今日は、誰と飲もうか……?」
そう呟くと、マンションを出て行った。