公庫の融資、県の補助金交付事務といった実務経験をもとに、日本の金融と補助金の問題点を考察していきます。当記事では補助金をめぐる諸問題について、筆者が語ります。
支給者のモラルハザード
このI社の事例について、釈然としないものはあったが、その補助金によってI社の経営がうまくいき、多額の利益を出して税金という形で返してもらえれば、その補助金はいきたことになるのだから、そう思うことにした。ただし、地下タンクの所有と被災した事実を徹底的に調べたのだろうかという疑問は残っている。
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この件に限らず、補助金の受給資格や補助金の対象としての妥当性に疑義が生じた場合に、「被災者に寄り添う」という錦の御旗のような文句が言い訳に使われ、徹底的な調査がおろそかになることを私は恐れる。「徹底した調査」などというのは民間人の発想なのかもしれない。
私は長いこと融資の仕事に携わっていたが、融資したものが回収不可能になれば、回収可能性についての調査、金融機関では「審査」という、が充分行われたのかということが必ず問題にされる。もちろん、融資と補助金はまったく別のものだ。
金融機関にとって融資がこげついたら利益減少の要因になるので問題だが、補助金は出してしまえばそれで終わりだから後のことは気にかける必要はない。形式要件さえ整っていれば、そこに見落としがなければ、あとはどうなろうと責任を問われることはない。