第5話 黒い鞄(アタッシュケース)

ボーン、ボーン、ボーン黒い柱時計が鳴る。

「もう、三時か。少し休憩しようか」シマは背伸びをした。

「あっ先輩、先輩、東京の極秘会議はどうでしたか……」涼子は訊く。

「物量、科学力、そして人材、人員全てにおいて現在の日本はアメリカに大幅に負けている。沖縄が占領され、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の大都市が空襲を受けている。このままだと、本土決戦も極めて近いと思う。これから想定される本土決戦用兵器の開発・実践が会議の主題だった。……試作品だが、もうここに来てもいいはずだが……」

三人は暫く沈黙した。ドンドンドン、けたたましくノックをする音。

「やっと、来たか、お前らはそこにいろ!」シマは灰皿に煙草を押さえつけ基地の出口に駆け出した。基地の頑丈な鉄製のドアを開ける。

「お、おい!」シマは大声を上げた。頭から血を流した1人の兵士が立っていた。