公庫の融資、県の補助金交付事務といった実務経験をもとに、日本の金融と補助金の問題点を考察していきます。当記事では補助金そのものから離れ、補助金をめぐる諸問題について、筆者が語ります。
モラルハザード
不正の歴史
補助金をめぐる問題といえば、まっ先に思い浮かぶのが不正受給の問題だ。例えば、2017(平成29)年の12月に、スーパーコンピューターを開発するベンチャー企業が経費を水増して補助金を不正受給したとして代表者が詐欺罪で逮捕された事件は記憶に新しい。
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最近では、2019(令和元)年5月に企業主導型保育園補助金不正受給が新聞報道された。これは待機児童対策の一環として、国が2016(平成28)年から制度化した「企業主導型保育所」の助成事業で、工事費を水増し請求して国の補助金約8000万円を不正受給したとして東京で保育事業を展開していた愛媛県の会社の代表者が逮捕されたという事件である。
このような事件は日本だけでなく外国でも起こる、そして、かなり昔からある。
アダム・スミスは、輸出奨励金についてこう言っている。