宦官に必ず課せられる、とある通過儀礼


「それから、そなたは曹端嬪(ツァオたんぴん)づきの宦官となる」
「ほんとうですか」

「あのお方が、ああおっしゃったら、そうなるのだ。荷物をまとめたら、翊坤宮(よくこんきゅう)に来い。よいな。そこに、曹端嬪(ツァオたんぴん)がいらっしゃる。これから、あのお方のことは、主子(チュツ)と呼べ。そなたは、宮中の作法を、どれほど学んだ」

「李清綢(リーシンチョウ)師父のもとで、一通りたたき込まれました」

「それなら、大丈夫だろう。万が一にも、粗相があってはならん。忍び、そして、よくはげめ。われの言うことを、理解したか」

「はい……」
「なんだ、訊くことがあるのか?」

宮中にあがるにあたっては、宦官には、必ず課せられる『験宝(イエンパオ)』という通過儀礼がある。衣服をぬいで、まぎれもない宦官であることを証明すると同時に、むかし切り落とした、おのが陽物を、見せなければならぬのである。

「『験宝』の準備は、しておくべきでしょうか」
「むろんだ」

駄熊太(ドゥオシュンタイ)師父は、何をあたりまえのことを、とでも言うように、みじかく答え、身をひるがえすようにして立ち去った。