何事かと聞けば、メスが入った解剖セットがリュックサックの中に入れっ放しになっていると、物騒なことを言い出す。全く、なんでそんな物が入っているのだ。次男といい、長男といい、本当は北海道に行きたくないのではと疑ってしまう。

県外の大学医学部に在籍している長男は、解剖実習が終わった翌日(出発日当日)、普段通学に使用しているリュックサックから、解剖実習用の器具セットを取り出すのを忘れて、着替えを詰め込むや、押っ取り刀で駆け付け、僕たちと空港で合流したのだ。

メスが入っていることを知らずに保安検査場に向かえば、ハイジャック犯と思われても仕方がない。それくらいに僕に似た長男・次男は人相が悪いのだ。

とにかく、正直に空港職員に「恐れながら」と解剖セットを差し出すように長男に助言する。長男は、しどろもどろになりながら職員に説明している。

どうやら理解してもらえたようで、解剖セットを破棄用ボックスに入れるように指示されている。とにかく無事に搭乗できた。