それを聞いた彼女は涙目になった。
「ひどい……」
そして、うつむくと涙を流した。それを見て、禅は一瞬かわいそうだと思ったが心を鬼にした。
「だってそうだろ? 一緒に映画を見たり、買い物をしたりしたけど、俺たちはキスをした事も無いんだぜ、どう見てもただの友達だ!」
彼女は泣きながら禅の方を見ると、反論するように言った。
「それは禅が求めて来ないから……」
「だから、そう言う事だよ、俺はキミの事が好きじゃない!」
彼女は、また下を向き泣き出した。
「さよなら……」
禅は、そう言うと足早に去って行った。禅は彼女がかわいそうだと思ったが、それ以上に自由になれた事と、ストレスから解放されたという気持ちの方が強かった。
その後、彼女から“やり直したい”と、何度か連絡があったが、禅はそれを無視した。
そして、三年生たちの卒業式の日を迎えた。禅はバスケ部の先輩たちに別れを言っていた。
「先輩、お疲れ様でした」
「禅、お前と一緒にバスケをやれて良かったよ」
「自分も良かったです」
「本当に、そう思っているのか?」
先輩たちは笑った。そして真剣な顔をすると言った。
「全国大会二連覇、頼むぞ、お前ならできる!」
そう言うと禅の肩を叩いた。
「先輩……」
禅は感極まって泣きそうになった。それを見た先輩は笑顔を見せた。
「じゃあな、いつか有名になっても、俺たちの事を忘れないでくれよ」
「はい……」
禅も涙をこらえながら笑顔を作った。
先輩たちを送り出した後、門の所まで行くと別れた彼女が、友人数名と立って話をしていた。彼女は禅に気付き、何か言いたそうだったが、禅は気付かないふりをした。そして足早に学校を後にした。