それぞれの道
禅は高校に進学すると、その才能をさらに開花させた。禅は一年生ながら、レギュラーになると、ルーキーで高校生記録を次々と塗り替えていった。そして彼女も出来た。勉強こそ、ソコソコだったが、禅にそれは必要なかった。
「奴を中に入れるんじゃないぞ! わかったな!」
「はい!」
そんな敵の監督の言葉は無意味だった。ドリブルをしている禅に、ディフェンスが次々に抜かれていく。
「リング下に入れるな!」
しかし無駄だった。全員が戻って守備を固めた所で、三ポイントが決まる。どこからでもシュートが打てて、スピードが違いすぎる。基本的な身体能力に差がありすぎた。
「ピー! 試合終了!」
先輩たちが禅に駆け寄る。
「すごいぞ、禅!」
まさにヒーローにふさわしい光景だった。禅は観客席に目をやった。
「禅くん! カッコいい! 最高よ!」
そう言って彼女は飛び跳ねながら手を振った。
次の日の放課後、禅は彼女といた。
「禅くん。昨日の試合最高だったよ、本当にカッコよかった」
「そうかな、あんなの普通だよ」
「そんな事ないよ! あんな試合、禅くんしか出来ないよ! ああ、禅くんの彼女で良かった」
禅は黙って考えていた。
“本当にこれでいいのか?”